6.公安委員会についての審査
①暴力団離脱者に対する支援について
質問者:中野郁吾
早速質問に入る。まず、暴力団離脱者に対する支援についてである。
 昨年の警察常任委員会の管外調査において、福岡県警を視察し、暴力団対策の現状について調査する機会があった。
 福岡県には、改正暴力団対策法により、全国初となる特定危険指定暴力団に指定された組織もあり、福岡県警としては、取り締まりを強化して人的基盤や資金的基盤の切り崩しを行うなど、暴力団組織の弱体化に向けた努力をしているとのことであった。
 もちろん、兵庫県においても暴力団対策の基本は同様で、いわゆる「ヒト、モノ、カネ」すなわち、暴力団構成員や拳銃等の武器、そして資金源を絶つことが重要と聞いている。
 中でも、「ヒト」については、多くの暴力団員を離脱させることにより、その組織の勢力が衰え、集金力が低下し、武器の入手も困難になる。この人的基盤の切り崩しという方針は、組織に大きなダメージを与える効果的な方法であると思う。
 しかし、せっかく組織から離脱させたとしても、その後の受け皿となる就職先がなければ、結局、また暴力団員として活動することになりかねない。
 離脱者を社会の一員として定着させるため、警察、暴力団追放センター、刑務所等の矯正施設、ハローワーク等の機関や、企業が連携した支援活動が推進されていると聞くが、それでも、一般企業で勤務したことがない元暴力団員が、いわゆるサラリーマンとして働くのは困難であり、雇用者としても採用をためらう状況があるのではないかと思う。
 そのような中、兵庫県警では暴力団を離脱した元組員を雇用した県内の事業所に対して、給付金を出す制度を創設すると伺った。このような支援を行うことで、元組員の雇用を考える企業経営者の決断を後押しし、更正を希望する元組員の就労先が増えて、離脱後の生活安定につながることと思う。
 そして、社会復帰に成功した事例が増えることにより、組織を離脱する組員も増加するのではないかと考える。
 そこで、県警察において、この新たな制度を含め、暴力団の組織弱体化に向けた人的基盤の切り崩しを行うため、暴力団離脱者の就職支援についてどのように取り組んでいくのか伺う。
答弁者:兵庫県警察本部長
暴力団離脱者に対する支援について、暴力団の弱体化及び壊滅に向けては、一つには取り締まりを強力に推進することが挙げられる。また、暴力団排除活動の推進、これらと併せ、暴力団から離脱した者が再び組織に戻ることがないよう必要な支援を行うことも、人的基盤に打撃を与えるという上からは取り組むべき重要課題である。
 本県では、暴力団排除条例の制定以降、暴力団排除機運が更なる高まりを見せていると考えている。また、六代目山口組と神戸山口組の対立状態の長期化により、資金獲得活動が困難化しているという様子もうかがえる。
 さらに、警察の取り締まりもあり、今後暴力団から離脱する者の増加が見込まれる。
 しかし、暴力団離脱者は社会経験や業務に関する知識が乏しく、雇用する事業者が雇った上で、さらに一定の社会教育を要し、職場に入ってからも職場環境になじめず、短期間で辞めたり、ささいなことで同僚等とトラブルを起こす懸念があり、雇用を敬遠される傾向があることは否めない。
 そこで、県警察としては、暴力団離脱者を雇用した事業者に対し、一定期間、給付金を支給する暴力団離脱者雇用給付金制度を今般創設し、財政的支援を行うことで、離脱者受け入れ事業者の拡大や雇用主として受け入れやすい環境の醸成を図った。
 このほか、暴力団離脱者の受け入れ事業所をさらに拡大し、これまで活動していた地域と異なる他府県でも働くことができるという道を開くという趣旨で、東京、大阪、福岡など19都府県にある暴力団離脱者支援協議会で構成する広域連携協定に本県も加入した。
 これにより、本県を含めて20の都府県の間で相互に離脱者の就労支援を行うことができるようになった。
 今後も、県警察としては、暴力団追放兵庫県民センターや兵庫県暴力団離脱者就労対策協議会など、理解をしてもらっている団体、あるいは企業と連携を図り、受け入れ賛助事業所を1社でも多く増やし、また、警察官や社会復帰アドバイザーなどによる継続的な生活や就業支援を行い、アフターケアーを続けることにより、暴力団離脱者の社会復帰支援対策をさらに強化していく。
質問者:中野郁吾
暴力団からの離脱者が離脱後に、就労になじめない時は、生活保護を受給するケースが多いということも聞いているので、定職に就いて、社会復帰できる取組は非常に重要である。
 ただ、定職に就かせるには、雇用する企業の協力が欠かせず、暴力団を雇うにあたって、資金面だけではなく、雇用する企業の不安をしっかりと解消するための相談やフォローができる体制も併せてさらに進めてもらいたい。次の質問に移る。