1.一般質問
⑤スポーツを通しての子どもの健康と体力育成について
質問者:中野郁吾
五つ目の項目は、スポーツを通しての子供の健康と体力育成について質問いたします。
 子供たちの体力低下が叫ばれて久しく、1980年代をピークに下降傾向が続いております。一時、改善の兆候が見えてきましたが、文部科学省が昨年11月に発表した2014年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」、いわゆる全国体力テストが全国の中2、小5の約214万人の参加のもと行われました。その結果、本県の小学校5年生男子が全国38位、同学年女子は41位、中学校2年生男子は42位、同学年女子は35位で、いずれも下位で、全国平均を下回っています。
 一方、「平成26年度兵庫県児童生徒体力・運動能力調査報告書」によると、本県の児童生徒の平成26年度の体力・運動能力と平成25年度の全国平均値の比較において、本県の児童生徒は、全ての校種で、男女とも全国平均と同程度もしくは上回る項目が多く、男子は全ての学校の種別において上昇傾向を示しているとのことですが、いずれの結果を見ても、体力水準の高かったとされている1980年代半ばよりもまだ劣っている状況かと思われます。
 これは社会を取り巻く環境の変化が、体力低下の要因になり、子供が外で遊んだり、スポーツをしたりするための時間、空間、仲間という三つの「間」--「あいだ」という字--が減り、成長期に広くスポーツに親しむ機会や環境が少なくなったのではないかと思います。体力低下は、体の問題にとどまらず、外遊びやスポーツは生きる力を身につけ、対人関係を学ぶことにもつながり、人格形成にも関わるのではないかと思います。
 こうした体力低下世代が大人の年代に差しかかると、今後は生活習慣病の増加、医療費の肥大化が懸念されています。医療費抑制の視点からも、運動やスポーツを通してのさまざまな体力向上策を進める必要があると思います。
 福井県では全国体力テストの結果で、ここ数年、常に小学校5年生男女とも、中学校2年生男女ともに上位の結果となっております。同県では2010年度のテストで握力が弱いと見た県教育委員会が、有識者らの助言を受けて、2011年度から握力強化のためのグー・パー体操をわずかな時間でも、毎回続けることが大事ということで、体育の授業の冒頭に行っているとのことです。また、裏山を走って持久力を高めるデコボコレースや、授業と授業の間に業間体育を2時間目の後の大休みと呼ばれる20分から30分程度の休みの時間に、マラソンや縄跳び、鉄棒などを年間を通じて行っており、このような具体的な取組の積み重ねが、昨年度の4部門トップの要因の一つであろうとのことです。
 これから、本県では日本スポーツマスターズ2017が開催され、国では2020年に東京でオリンピック・パラリンピック、さらには関西ワールド・マスターズ・ゲームズが2021年に開催されることが決まり、今後、スポーツに対する機運が高まってくるとは思います。
 「スポーツ立県ひょうご」を実現し、「元気なひょうご」の創造を目指している本県において、子供がスポーツに親しみ、自ら参加することにより、運動の習慣や正しい生活習慣を確立し、発達段階に応じた健康や体力増進を図り、また個性を伸長し、そして仲間と楽しさや感動を分かち合うことで友情を深め、良い人間関係を構築することに大きく期待できます。
 さらには、子供たちが将来力強く、健康で活力的に生活を営むためにも、更に国内外の大会で活躍するアスリートを本県から多く輩出し、県民に夢と感動を与えてもらうためにも、子供のうちからスポーツを通して体力づくりをしていく必要があるのではないかと考えます。
 そこで、本県では県内の全小学校区に地域スポーツ活動を支援するスポーツクラブ21ひょうごの設置などスポーツ環境の整備に先進的な取組を行ってきましたが、スポーツをする子供の増加と体力の向上について、これまでの成果と、今後の課題へどう取り組むのか、ご所見をお伺いします。
答弁者:教育長
次に、スポーツを通しての子供の健康と体力の育成についてです。
 このことについては、かねてよりさまざまな取組をしておりますが、平成14年度からは運動遊びを推奨いたします「ひょうごキッズ元気アップブック」というものを作成して、各学校では始業前、休み時間、体育の授業の冒頭など、学校の実情に応じて、先ほどご紹介のあった福井県の例と同様の体力・運動能力向上に向けた取組が行われています。
 ただ、依然課題もありますことから、平成24年度に策定いたしました県スポーツ推進計画においては、スポーツをする子供の増加と体力向上を重点目標に掲げまして、スポーツの楽しさや喜びを味わう機会の提供と子供のスポーツ実践習慣の形成を図っているところです。
 具体的には、学校に対しましては、小中学校ごとの発達段階に応じた効果的な運動実践例を示します運動プログラムのDVDの活用促進や、小学校には体育専科の教員がおりませんので、専門的な指導力を有する体力アップサポーターの派遣などを行っています。
 また、地域に対しては、全県のスポーツクラブ21の代表が集う会議などで、親子が行うプログラムの実践発表を行い、優れた取組を発信してきました。この結果、親子で行うスポーツプログラムを実施するクラブの割合は、一定上昇するなど、スポーツに親しむ環境整備は徐々に進みつつありますが、体育の授業以外で、1日に1時間以上スポーツをする子供の割合について見ますと、中学校では約8割に達しているのに比べ、小学校、高等学校では5割程度にとどまっています。特に女子が低い傾向にございます。
 また、体力・運動能力については、ご指摘のように、向上傾向にありますが、最も水準が高かった昭和60年頃と比べると、まだその水準には達しておりません。
 今後、こうした課題を踏まえまして、まず幼児期からスポーツに親しむきっかけづくりといたしまして、平成25年度から実施をしています幼稚園教員を対象とした「体つくり・運動つくり」の実技講習会を継続・充実をさせます。
 また、スポーツクラブが実施する親子スポーツ大会の拡充にも努めてまいります。
 また、運動の定着化に向けましては、先ほど申しました体力アップサポーターによりまして、小学校教員を対象として、子供に運動技能を習得させるコツを教える実践研修、あるいは中学、高校でのいきいき運動部活動支援員の活用による生徒の多様なニーズに対応した運動部活動を推進して、子供たちに豊かなスポーツライフを継続する資質と能力を培ってまいります。